波風が立たないところに、波風が立つ。だから家族の物語は面白い
–監督の作品は食事風景が特徴だと私は思うんですが
それは『南極料理人』という映画をやったからかな?でも、食べるシーンを撮るのは昔から好きです。みんなでわいわい食事を食べるのっていいじゃないですか。そこにグルメ的要素は全くないけれど、ただただご飯を食べている。一歩引いてみると、家族全員でご飯を食べるのってあと何回なんだろう?とか、いろんなことを考えられるなって。
波風が立たないところに、波風が立つ。だから家族の物語は面白い。あまり気を使わなくてもいい、何も話さなくてもいい。でも、そこに何かが起きた時に試される。それがいいなって思うんです。
–もたいまさこさん演じる春子の雰囲気よいですよね・・・
もたいさんが演じてくれた春子、もちろんうちの母のイメージもあるんですが、いわゆる昭和のお母さん。「めんつゆが一番おいしいのよ」というセリフは、まさにそれを表している。うちの母も「にんべんのめんつゆを入れておけば味は整う。酒、みりん、醤油は必要ない」って言うんですよ。そのおおらかさがいいんですよね。
今回、もたいさんも前田さんも左利きだったんです。春子と由佳が二人で並んで煮物を作るシーンがあるんですが、嫁姑の関係なのになんとなく似た者親子の感じが出ていて、いいなーって思いましたね。
映画ってやっぱり面白いんです
–松田さん演じる永吉は夢を捨てきれずにいますが、監督にとって夢とは?
若い頃から、“なんじゃこの映画!?すごい映画だな!”みたいなのを撮りたいとは思っていますよね。得体の知らないものを撮らないと満足できないというか。驚かせたいというか、笑わせたいというか・・・そういう感情が爆発するような上映ができたらいいな・・・というのが夢ですかね。映画ってやっぱり面白いんですよね。
–永吉のように夢と家族との狭間で揺れることはありましたか?
映画を撮りながら生活していければうれしいなって思っていました。家族を置き去りにしているからこういう映画を撮って、謝罪のつもりなのかもしれないです(笑)。
–監督がこの作品を見る方々に伝えたいメッセージは?
ただただ面白く楽しい映画を作りたいなと思って撮ったので、笑って観ていただければうれしいです。難しいことは考えずに気楽に観てください。
『モヒカン故郷に帰る』
3/26(土)広島先行公開、4/9(土)テアトル新宿ほか全国公開
出演:松田龍平 柄本 明 / 前田敦子 もたいまさこ 千葉雄大 美保純 木場勝己 小柴亮太 富田望生
監督・脚本:沖田修一(『南極料理人』『キツツキと雨』『横道世之介』)
主題歌:細野晴臣「MOHICAN」(Speedstar Records) 音楽:池永正二
配給:東京テアトル
©2016「モヒカン故郷に帰る」製作委員会
バカヤロー! だけど、ありがとう。家族が集まれば、最高で最強!
モヒカン頭がトレードマークの売れないバンドマン永吉。妊娠した恋人・由佳を連れて、故郷・戸鼻島(※ルビ:とびじま)へ結婚報告をするため7年ぶりに帰る。永吉たちを待ち構えていたのは、矢沢永吉をこよなく愛す頑固おやじ・治と筋金入りのカープ狂の母・春子、そしてたまたま帰省していた弟・浩二の3人。家族がそろえば、いつもど派手な親子喧嘩が始まる。そんな時に親父のガンが発覚。治の願いを叶えるため、永吉はピザを取り寄せたり、父の代わりに吹奏楽を指揮したりと奮闘し、不器用にぶつかりあいながら、喧嘩したり笑い合って離れた時を埋めていく。そして治が強く望む永吉と由佳の、島を挙げての手作り結婚式が始まろうとしていた――。家族が集まれば、最高で最強! 現代版究極のホームドラマが、この春日本を熱く盛り上げる!