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私のごきげんな毎日

アリスのままで

シネマキアート
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今回はジュリアン・ムーアが本年度アカデミー賞ほか、各国の映画祭で主演女優賞を22冠獲得した『アリスのままで』を紹介します。

映画のテーマとなるのは「若年性アルツハイマー病」。通常65歳以上に発症するアルツハイマー病と違い、40代から65歳までに発症した場合を若年性アルツハイマー病と呼び、ほとんどが遺伝で、老年期発症と比べ進行が早いと言われています。

本作は、若年性アルツハイマー病と診断された50歳の言語学者アリスの苦悩と葛藤、そして彼女を支える家族との絆を描く人間ドラマ。人生の充実期を迎えていたアリスに突如異変が起こり、それからあれよあれよという間に記憶や知識が抜け落ちていきます。そんな時に、かつての自分が残した映像を発見。そこには自分が自分であり続けるためのメッセージがあり、それを実行しようとしますが……。

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これは他人事の話ではなく、誰にでも起こりうる身近な問題です。もしも私や家族が自宅のトイレの場所を忘れてしまう状態になってしまったらどうするのかと、観終わった後に色んなことを考えさせられました。

本作をご覧になると、きっと私のように共感する方が多いと思いますが、身近なテーマということのほかに、日々記憶を失っていく主人公目線でストーリーが展開するように作られているということも挙げられます。メガホンを取ったのは、リチャード・グラッツァー&ウォッシュ・ウェストモアランド監督。ニュース報道もあったのでご存知の方もいるかと思いますが、グラツァー監督は、ジュリアンがオスカー受賞後の約半月後の今年の3月に亡くなりました。

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グラツァー監督は2011年にALS(筋収縮性側索硬化症)と診断されながらも本作に着手。自身の闘病生活での体験や思いを作品に投影し、公私におけるパートナーのウェストモアランド監督との共同作業で2014年に完成。本作は監督の人生をかけた渾身の作品となりました。

そんな彼らが完璧な配役だと絶賛するジュリアンは、見事にアリスの精神状態や気持ちが観客に伝わるように熱演。映画の中盤、アリスが認知症の介護会議でスピーチをするシーンがあるのですが、監督の思いともリンクし、病気と闘い前向きに生きる力に感動と勇気を覚えます。

ちなみに、私がここ数年で好きなジュリアン出演の作品は、『シングルマン』(09)、『ラブ・アゲイン』(11)、『マップ・トゥ・ザ・スターズ』(13)(←迫力の怪演でカンヌ国際映画祭で主演女優賞獲得!)ですが、これらとはまた違ったジュリアンの女優魂を、『アリスのままで』では観ることができます。アリスと家族が選んだ道を確かめてください。

アリスのままで
6月27日(土)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座他全国ロードショー
http://alice-movie.com
(C)2014 BSM Studio. ALL Rights Reserved.

フリーランス エディター・ライター國方 麻紀(くにかたまき)
香川・丸亀出身、東京・吉祥寺在住のエディター・ライター。
女性誌『ELLE JAPON』『VOGUE JAPAN』のウェブエディター、ウェブサイト「GLAM」「tend」「BRASH」統括編集長を経て、現在はフリーランスに。好きな映画のジャンルは、バイオレンスや時代劇、B級など。
「このコラムを読んで普段観ないようなジャンルの映画にも興味を持ってもらえたらうれしいです!」
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